旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されます。
宿泊施設を設けて、宿泊料を受けて人を宿泊させる行為は、旅館業法に規定されている「旅館業」に該当し、その業を京都市内で行うには京都市長の許可を取得する必要があります。旅館業法では、宿泊施設の規模・用途に応じて「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の許可区分となっています。
コロナ感染症の影響で、外国人旅行者の激減や国内観光旅行の縮小等により一時的に「観光・旅行業界」はダメージを受けましたが、「観光立国・日本」は揺るがないと思います。特に「京都」は、旅行で行ってみたい都市で世界で一番人気のある都市になっていますから、これからも「旅館業」は、拡大していくと思います。

旅館業許可申請手続きの流れ

ここでは、京都市内で外国人向けに大変増加した「ゲストハウス(簡易宿所)」の許可申請手続きを記載します。
オーナー様 ご自身で申請する際の参考にして下さい。

事前相談

ゲストハウス(簡易宿所)の許可を取得するには、旅館業法だけではなく、建築基準法・都市計画法・消防法、廃棄物処理法・条例等、の関係するすべての法令の基準を満たさなければなりません。申請窓口の保健所にプラスして各法令を管轄する役所と事前に相談し、工事を着工してから困ることが無いように事前確認が重要となります。
例えば、旅館業の可能なエリアなのか?(都市計画法の用途地域の制限)、前面道路や建物の構造に問題ないか?(建築基準法の規制)、施設の付帯設備に漏れがないか?(条例の規定、消防法の規制)等々について事前に相談や確認しておくと安心です。

計画の公開

ゲストハウス(簡易宿所)の開設に際し、施設の近隣住民及び自治会等への事前説明が条例で定められています。
平成30年頃の「観光バブル」「観光公害」と呼ばれた外国人旅行者の迷惑行為への対処等が開設者に義務化されています。
具体的には、ゲストハウス開設前の標識(5号様式)の設置や近隣住民・自治会等への説明会の開催等となります。

許可申請(旅館業法と条例の申請が同時に必要)

事前相談・事前確認が終わったら、建物所在地を管轄する保健所(京都市であれば医療衛生センター)へ書類の申請をします。
申請書類及び添付書類は、概ね以下の内容となります。

旅館業法の申請書類及び添付書類


【必須書類】
①旅館業許可申請書(第1面~第4面)
②周辺地図(住宅地図等で、施設の概ね200mの区域図)
 ※施設の敷地境界から110mの範囲内に学校、幼稚園、公園等が存在する場合は、「学校等への意見照会」が必要です。
③平面図(色付き内寸で寸法記入)⇒ 複層階の場合は、全ての階の平面図
④客室・寝室の床面積・窓面積の計算式 ⇒ 各々基準以上の面積が必要
⑤配置図、立面図
⑥避難通路の状況、避難通路の幅員が確認できる図書(配置図に記載で可)
⑦消防法令適合通知書(原本)⇒ 施設計画段階で消防署へ申請し、工事完了時に消防検査合格で受領した通知書
【申請状況に応じて必要な書類】
⑧循環ろ過装置の概略図 ※入浴設備に循環型ろ過設備がある場合
⑨水質検査結果の写し ※井戸水等を使用する場合
⑩定款の写し ※営業者が法人の場合
⑪登記事項証明書(原本) ※営業者が法人の場合
⑫住民票の写し ※営業者が個人の場合(マイナンバー不記載のもの)
⑬建物の検査済証、確認済証の写し ※新築建物や用途変更手続き等がある場合
⑭帳場詳細図
⑮ロビー詳細図(ロビー明示、ロビー面積)
⑯階層式寝台の詳細図
京町家として玄関帳場の特例を受ける場合 ※事前の書類提出と審査が必要
⑰外観写真、京町家の痕跡を示す内装の写真等
⑱登記簿・閉鎖登記簿等 ※建築基準法施行以前の建物であることの証明
⑲使用人の駐在場所を示す付近見取り図
小規模宿泊施設として施設外玄関帳場を設置する場合
⑳施設外玄関帳場の所在地を示す付近見取り図 ※小規模宿泊施設との距離明示が必要
㉑施設外玄関帳場が存する建物の各階平面図
㉒施設外玄関帳場詳細図 ※帳場面積、受付台位置、天井高と開口部、モニター画面等がわかる図面
㉓使用人の駐在場所を示す付近見取り図 

条例対応の提出書類 ※京都市の場合

【事前連絡】
旅館業許可申請日の20日間以上前に「旅館業施設の計画の概要(第5様式)」を、申請建物に設置し写真撮影をします。
その上で、標識設置報告書(第2号様式の第1面、第2面)を医療衛生センターに提出します。
これが、許可申請前の事前連絡となります。
報告書の記載内容は、標識の文字が見える写真、建物全景の写真、施設設置場所周囲200mの地図等になります。

【提出書類】
①旅館業報告書(第3号様式)
②標識設置状況の提出(第5号様式の標識を設置している状況を書面提出)
③廃棄物処理の方法 ※事業所ゴミでの処分方法を提出
④近隣説明会等の説明状況等報告書(第1面、第2面)
⑤周辺地図 ※施設敷地の周囲10m範囲内の敷地に存する建築物を明示
⑥近隣住民に周知や説明の際に用いた文書等
⑦宿泊者への施設までの案内に用いる文書等
⑧宿泊者へのマナーに関する周知の際に用いる文書等(騒音、喫煙やゴミ、廃棄物処理、火災、等の対処法を周知)
⑨迷惑行為に対する確保体制(緊急連絡先、待機場所、駆け付け体制等)
⑩建物登記簿(賃貸物件の場合は、賃貸契約書、等)
⑪旅館業施設に掲げる標識の設計図、掲示場所の図(営業者氏名、施設名称、営業種別、等)
⑫代理人を選任した場合、代理権を証する書類(営業者が国外法人の場合)
⑬施設外玄関帳場を使用する場合は、その掲示の設計図、掲示場所の図
⑭申請手数料 52,800円 

許可申請のまとめ

旅館業許可申請の際の役所に提出する書類を列挙しましたが、数が多いのが特徴です。但し、大枠にまとめると
(1)旅館業を営業する営業者の概要(法人・個人)
(2)旅館業を運営する建物施設の概要(構造や規模、設備等)
(3)施設の営業体制の概要(宿泊者や近隣住民との対応方法等)
の3要素について、色々な書類が求められていると言えると思います。
これらは、ゲストハウス(簡易宿所)を開業し、営業展開していくうえで必須の項目だと言い換えることも出来ます。

保健所(医療衛生センター)での審査

【書類審査】
申請者が提出した申請書類に不備や誤りが無いかどうか、職員の審査があります。場合によっては、追加資料の提出を求められたり、提出書類の補正等の連絡があります。各々至急に対応することになります。

【現地調査】
書類審査が終わると、次に「現地調査」となります。申請した書類や図面通りに現地の居室面積や窓数、洗面所や浴室、トイレ等の設備に変更や不足・不備が無いかどうかの現地審査が行われます。万一、図面と異なっていた場合は、至急に対応を行います。

旅館業許可証の発行、申請事項の変更届

書類審査、現地調査の審査が、完了すると「許可証」の発行となります。
申請書類の不備等が無ければ、申請から約1カ月半(土日・祝日を除いた役所の営業日で30日間)程度で許可が下りると思います。

許可申請の申請事項に変更が生じた場合は、変更届を提出して下さい。
主な変更の内容は、以下の内容です。
①営業者の住所、又は営業者の氏名(法人&個人)
②管理者の氏名、又は住所
③施設の名称
④施設の構造設備の変更
⑤使用人の氏名又は駐在場所
⑥代理人の氏名、住所又は連絡先(法人&個人)

以上が、旅館業申請手続きの流れでした。申請書類や添付書類の詳細については割愛しましたが、大枠は記載の通りです。
「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」と各々の規模に応じて提出書類が若干異なります。詳しくは、窓口にてご相談して下さい。そして、申請手続きについては任せたいと云うことであれば、いつでもご相談下さい。