相続開始後、故人の遺言書が無い共同相続の場合は、相続人全員参加による遺産分割協議を行われなければなりません。
相続財産に不動産が含まれている場合は、誰がその不動産を引き継ぐのか・・・?遺産の配分をどのように分割するのか・・・?
仲の良かった兄弟姉妹が、遺産分割協議で「争続」になってしまい、その後、疎遠になってしまうことなどもあります。
遺産分割協議の目的は何か・・・? 
相続人全員が納得できる「遺産分割」とは、どういう内容なのか・・・? 

遺産分割協議の意義

相続開始後、故人の「遺言書」がある場合、または「相続人」が1人だけの、いわゆる単独相続の場合は、遺産分割協議は必要ありません。
遺言書が無く、相続人が複数人存在している場合は、遺産をどのように分割するか?を相続人全員で協議して決めることになります。これが「遺産分割協議」です。
民法では法定相続割合、つまり、法定相続人がそれぞれどのような割合で相続するのかが定められています。しかし、遺産分割協議を行えば、法定相続割合とは異なる相続ができる場合もあります。
例えば、相続人が被相続人の配偶者と子ども2人、相続財産が預貯金と自宅だったとします。この場合、民法では2分の1が配偶者、4分の1ずつが子どもの法定相続分です。自宅は物理的に分割できないため、配偶者と子ども2人の共有財産となるでしょう。
しかし、遺産分割協議で合意すれば配偶者が自宅を単独で相続し、預貯金を配偶者と子ども2人で分割することも可能です。このときに話し合った結果を対外的に証明するために「遺産分割協議書」が必要です。

遺産分割協議書の作成手順

ステップ1_相続人の確定

遺産分割協議書は、法定相続人全員が合意したうえで作成しなければなりません。
そのためには、誰が法定相続人に該当するのかを明確にする必要があります。被相続人、つまり故人が出生してから死亡するまでのすべての戸籍を取り寄せ、法定相続人を確認してください。
被相続人に子どもがいない場合は、被相続人の両親、さらには祖父母の戸籍が必要なケースもあります。また、兄弟姉妹や甥姪が相続人となる場合は、調査に多少時間がかかるかもしれません。

ステップ2_被相続人の財産の調査・確認

遺産分割協議書には、被相続人が所有していた財産を明記する必要があります。
現金や預貯金、不動産、株式はもちろん、借入れも相続の対象であるため、漏れがないように調査してください。
調査方法としては、自宅にある通帳や書類を調べるほか、被相続人と取引があったであろう金融機関や保険会社などに問い合わせするなどが挙げられます。財産目録としてリストを作成するのが良いでしょう。

ステップ3_遺産分割協議をおこなう

法定相続人と相続財産が明確になったら、どう分割するのかを話し合いましょう。
遺産の分け方は、法定相続割合に関わらず自由に決められます。相続人全員が同じ場所に集まれない場合は、電話や郵送での話し合いでも問題ありませんが、協議内容には全員が合意する必要があります。
特に、不動産などの分割しにくい財産は、誰がどう相続するのが望ましいのか、慎重に考えましょう。

ステップ4_遺産分割協議書を作成する

相続人全員が合意できて協議が終わったら、「遺産分割協議書」として書面にまとめます。
記載すべき内容は、次の4点です。

  • 被相続人の最後の住所や氏名、死亡日
  • 相続人全員が合意している旨の内容
  • 分割する相続財産の詳細
  • 相続人全員の氏名と住所、実印の押印

添付書類として、実印であることを証明する印鑑証明書も用意します。
書面には相続人全員が署名・実印を押印し、全員分の印鑑証明書とともに各々が所持します。
印鑑証明書の発行日付は、遺産分割協議書の日付より前である必要があります。
なお、財産配分がない遺産分割協議書に署名押印することと、相続放棄は異なるため、混同しないように注意してください。
遺産分割協議は、あくまでも相続人同士の話し合いです。相続放棄をする場合、相続の開始を知った日から3ヵ月以内に、被相続人の最後の住所地にある家庭裁判所へ申述しなければなりません。仮に、遺産分割協議書で一切相続しない旨を明記しても、家庭裁判所に対して相続放棄の手続きをしなければ、債務の返済義務が生じる可能性があります。

協議書作成の4ポイント

遺産分割協議書の作成時に気を付けたいポイントを、4つ記載しておきます。

協議は相続がわかった時点で早めにはじめる

遺産分割協議書の作成に期限はありませんが、相続手続には期限があるため、相続開始がわかった時点で早めに協議を始めましょう。相続税の申告・納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内と決まっています。
また、相続放棄をしたい場合は相続の開始を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。

遺産は漏れがないよう正確に記載する

現金・預貯金・不動産・株式などはもちろん、保証債務・借入金・ローンなどのマイナス財産も漏れがないようにします。
遺産分割協議書の作成時には、どの財産か特定できるように、正確に記載します。
特に、土地や建物などの不動産に関しては、登記事項証明書に書かれているとおりに記載して下さい。

作成後の変更は難しいため、慎重に協議を行う

遺産分割協議書の作成後に内容を変更したい場合は、相続人全員による新たな合意が必要です。また、遺産分割協議書を再作成するとなると、不動産の登記手続や相続税申告などが遅れ、トラブルに発展しかねません。
このように、遺産分割協議書の内容変更は問題が起こりやすいため、後日変更点が出ないよう内容を慎重に話し合ったうえで、作成して下さい。念のため、作成後に新たに相続財産が見つかった場合の取扱い方も明記しておくと安心です。

遺産分割協議書は全員で保管する

遺産分割協議書は1通でも問題ないとされていますが、トラブルを防ぐために相続人全員分を作成し、それぞれが所持するようにしておいてください。作成時に遺産分割協議書を人数分用意し、それぞれが自筆で氏名を記入し実印を押印します。一般的に、不動産の登記や金融機関の手続きで、印鑑登録証明書の提出が求められるため、相続人全員分の印鑑登録証明書も用意しましょう。

当事務所では「遺産分割協議書作成」の相談を承ります。必要に応じて「相続人調査」も対応可能です。お気軽にご相談下さい。